晴々とした気持ちに

年度末のある日の昼休み、国会の中にあるJTBで、ゴールデンウィークを避けての京都旅行の手配を済ませ、代金を支払って職場に戻る帰り道、携帯電話に着信があった。それはついにその時が来たことを告げる電話だった。落ち着いて妻に連絡してから、予定の調整を始める。せっかく取れた四条烏丸のホテルも、桂離宮京都御所の参観許可も、京都在住の友人夫妻との会食もすべてキャンセル。一年おきの歯の健診もキャンセル。サークルの友人が夏にロサンゼルスで挙げる結婚式にも、おそらく行けなくなるだろう。小さな予定についてはドタキャンの可能性を告げた上で維持しつつ、次の電話を待つことにした。

そして最初の電話から2週間が経過した新月の日に次の電話が来た。職場の人に迷惑をかけつつ休みをもらって、飛行機で迎えに行く。初めて降り立つ土地の初めての病院で、初めての、そして一生続く関係を築く人との出会い。そこから先は昼も夜もない。必要な技術を学び、拙いながらも実践する。そして鉄道を使っての帰京。病院のスタッフ、鉄道会社の職員、タクシーの運転手…数えきれない人のやさしさと親切に支えられた日々だった。役所に出向いて必要な手続をとるうち、いかに手厚い保護が私たちを守ってくれているかを感じた。自分のことは自分でやる、という当たり前のことがモントリオールではできず、多くの人に助けられて感謝の念でいっぱいだった。そして今回、日本でも多くの人に支えられていることを実感した。なんと素晴らしいことだろうか。誰が何と言おうと、私のこの社会に対する希望と信頼を否定することはできない。しかし大学生の時には、そうは思えなかったのも事実だ。こうしていつまでも勉強は続く。